
#持続可能な観光を目指して
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#持続可能な観光 #オーバーツーリズム #サステナブル・ツーリズム
西表島に訪れる観光客は、1995年にはすでに年間20万人を超えていましたが、2002年以降は毎年30万人を超えるようになり、40万人に達した年もあります。
人口が約2400人の島に、実にその100倍以上の人々が毎年訪れているのです。
観光業はこの30~40年で急速に成長し、現在では島の就業人口のおよそ5割が観光産業に従事していますが、その成長の中で、観光のかたちは大きく変わってきました。
近年よく耳にする「オーバーツーリズム」の問題は、西表島でも他人ごとではありません。
豊かな自然を守り、人々の穏やかな暮らしを維持しながら、観光という産業を持続的に、そして健やかに発展させていくには、何が必要なのでしょうか。
エコツーリズムのはじまり
西表島は、沖縄の本土復帰後に開発の波にさらされ、島の自然や文化を守りながら未来を切り開こうという青年たちが「シマおこし運動」を展開するようになりました。
島を自分たちの手でどう発展させていくかを模索する中で、「島の自然資源を守りながら外から人を呼ぶ、環境保全型の観光」を目指す考えにたどり着きました。それはちょうどその頃、欧米で広まりはじめていた「エコツーリズム」の概念に重なるものでした。
1996年には、日本初のエコツーリズム組織である「西表島エコツーリズム協会」が立ち上がり、協会で独自のエコツーリズムガイドラインを掲げて、エコツーリズムの普及に取り組んできました。
もともとの島の住民も、島に移住して観光に携わる人たちも、その自然を大切にしながら観光を育ててきたのです。


自然体験が日常に広がる中で
ちょうどその頃から、日本全国でアウトドアへの関心が高まり、自然の中で過ごす体験が広く身近なものとなってきました。それにともなって、西表島でも陸域でのアクティビティが急速に広がりを見せます。
ガイド事業者の数が急速に増え、「エコツーリズム」の理念から離れた観光を展開する事業者も現れはじめました。
同時に、西表島の世界自然遺産登録に向けた動きも本格化します。世界遺産登録によって観光客が一時的に押し寄せることや、「世界遺産ビジネス」を狙った外部資本の流入に対する不安の声も、地域で聞かれるようになってきました。
これまでガイドたちは、豊かな自然への敬意と仲間との信頼を軸に、自主的なルールや譲り合いの心でフィールドを守ってきました。
しかし、自然観光事業の急激な拡大を前に、それだけでは限界が見えはじめていたのです。
行政と地域によるルールづくり
そうした中で、行政が中心となり、新たなルールの整備が始まりました。
2020年には「竹富町観光案内人条例」が施行され、ガイドの質と安全性を高めること、地域資源の永く守り活かしていくことを目的に、陸域ガイド事業者の免許制度が導入されました。これは日本でも前例のない取組です。
さらに2022年には、国によって「竹富町西表島エコツーリズム推進全体構想」が認定されました。その中では、自然体験ゾーンと保護ゾーンの明確なゾーニングがされ、また、フィールドを利用に関するさまざまなルールが定められています。そして2025年3月からは、特に保護が必要な5つのフィールドにおいて、1日あたりの利用人数に上限が設けられました。
こうした制度の背景には、長年にわたるガイド事業者や地域住民との対話と合意形成があります。制度はつくったら終わりではなく、検証、改善をくりかえしながら、常に目的に近づけるような運用を維持しかなくてはなりません。
西表財団も、これらの制度の運用の中で、地域で大きな役割を担っています。


サステナブル・ツーリズムという視点
「SDGs」や「持続可能」という言葉が、今では社会にすっかり定着しました。
国連世界観光機関(UNWTO)は、サステナブル・ツーリズムを、「訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」と、定義しています。つまり、旅行者、観光事業者、地域住民のそれぞれにとって、「環境」「文化」「経済」の面で無理がなく、未来にわたって続けられる観光のかたちを目指すということです。
西表島では、この言葉を知らずとも、早くからその方向を目指して歩んできた人たちがいました。自然を採り尽くさず、手をかけすぎず、必要な分だけをいただき、次の世代に渡す。その暮らしの中に受け継がれてきた知恵が、今もこの島を支えています。
足元を見つめ、自然と調和するその生き方に、私たちは改めて学びなおす必要があるのかもしれません。
責任ある観光
観光によって地域が潤うこと、そして、かけがえのない自然が守られること。その両立は、言うほど簡単なことではありません。
けれども、難しいからこそ、考え続ける価値がある。どうすればバランスを保ち、次の世代に誇れる地域を引き継いでいけるのか。私たちは、試行錯誤を重ねながらも、その問いに向き合い続けています。
その中で、観光に訪れる人が果たす役割も、小さくはありません。
地域が大切にしてきたものを理解し、敬意を持って接する。旅を楽しむということが、そのまま守ることにつながる。
そんなふうに旅人が地域の一員となれるような観光が、きっとこれからの主流になっていくはずです。

西表財団の活動
○「竹富町観光案内人条例」の運用支援
○「西表島エコツーリズム推進全体構想」の運用支援
○ 観光利用による自然環境等への影響把握のための調査
○ 自然観光資源(陸域·海域)の適正利用推進
○ 持続可能な観光のためのグッドプラクティス推奨制度の検討
○ 携帯トイレ活用に向けた体制構築







