世界の宝、西表島 -生きものと人の豊かな営み-

世界自然遺産としての西表島
西表島のシンボルとして知られる「イリオモテヤマネコ」は、国の特別天然記念物に指定されており、世界で西表島だけに、およそ100頭が生息しています。
トカゲやカエル、昆虫、鳥、コウモリ、エビやカニなど、実に70種以上の生き物を餌とし、この小さな島で生き残ってきました。
同じ特別天然記念物の「カンムリワシ」や、日本最大のトカゲ「キシノウエトカゲ」をはじめ、爬虫類、魚類、昆虫類などに幅広く希少種が確認されています。
植物もまた同様に、西表島でしか見られないものや絶滅の危機に瀕して
いる種が、多く存在します。
島の自然環境を守っていくということは、つまり、これらの生き物の棲みかを守ることになるのです。
西表島には昔から変わらぬ人々の暮らしがあり、島の人たちが大切にしてきた宝は、世界自然遺産として世界の宝になりました。
世界中から島を訪れる人たちが、この宝にふれ、それをいつくしみ、大切にする人たちと出会った時に、この宝を「守りたい」という思いが生まれ、島の人と訪れる人が、手を取り合って未来に宝をつないでいけるように。
その輪が広がっていくことで、西表島が世界自然遺産であることを心から誇れるようになるのだと思います。
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世界遺産エリアの面積は、4地域合わせて約427㎢で、西表島における面積は、そのほぼ半分の208㎢にも及びます。
西表島がこの世界遺産の中でも特に重要なエリアであることがわかります。
西表島には、広大な亜熱帯の森、日本一の規模を誇るマングローブ林、豊かな水が流れる川や湿地、そして人々の暮らしが息づく里地があります。小さな島の中に多様な環境が詰まっていて、それらが互いに支え合いながら、豊かな生物多様性を育んでいるのです。
世界遺産エリアは陸地だけですが、西表島を囲う海にもまた、サンゴ礁や海洋生物が生きる生物多様性の宝庫です。
森も川も海も、人の暮らしも、すべてがつながり合い、ひとつの大きな命の循環をつくっていて、そのどれも欠かすことはできません。
2021年7月、西表島は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産」として、琉球列島の他の3地域と共にユネスコ世界自然遺産に登録されました。
日本には21件の世界文化遺産がありますが、世界自然遺産はわずか5件のみで、新たな候補地もありません。
周囲を海に囲まれ、国土の約7割が山地という自然に恵まれた日本の中でも、世界自然遺産として、「人類にとって普遍的な価値を持つ地域」と認められることは、本当に特別なことなのです。
これらの地域が属する琉球列島は、日本列島の南西、およそ1000kmにわたって弓なりに連なる島々です。
かつては大陸と陸続きでしたが、地殻変動や海面変動によって分断され、今の島々の姿になりました。それぞれの島で生物が独自の進化を遂げていった結果、多くの固有種や絶滅危惧種が生まれ、「生物多様性の保全にとって重要な地域である」とユネスコに評価されました。
日本の国土全体のたった0.5%にも満たないこのエリアに、きわめて多くの種の動植物が生息しており、まさに生物多様性のホットスポットと言えます。








